山じい完全ウォッチング

名工大生の就活に必要な情報を発信中。名古屋工業大学キャリアサポートオフィス長 山下教授に完全密着。Presented by welcomes inc

決め手は研究開発室の雰囲気|おもろい企業 明成化学工業(後編)

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おもろい企業探索ツアー第19回は、『明成化学工業株式会社』。 このシリーズは名古屋工業大学に縁のある企業を訪問して、社長や役員、名工大卒業生に話を聞き、山じいの視点からその魅力に迫るという企画です。では後編をどうぞ。(前編はこちら過去の特集一覧はこちら

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前編の会長のお話にあった通り、明成化学工業は明成商会の子会社(製造部門)として創業された。(今は親会社・子会社の関係にはなく、資本関係もないそうだ)

染料専門商社にはその商いの隙間が見える。つまり、今何を売れば儲かるのかが見えるのである。

「売れる商品がなければ作ったらいい」そんな発想で専門商社が製造部門を持つことはよくある。明成商会さんでも御多分に漏れず、戦後の復興契機に乗じて製造部門を併設した。それが明成化学工業である。

昭和23年に設立され、昭和27年に京都のこの地(右京区西京極中沢町)に工場を建てられたそうだ。この地は桂川にほど近く、地下水にも恵まれ、当時数多くの染色加工場が立ち並んでいた。

そして、昭和40年に大学で化学分野を修めた現会長が会社に戻り、ぐいぐいとこの会社を成長させてきたんだ。最も大きな動きは昭和34年に販売を始めた「アルコックス」の生産合理化と設備体制を整えたことだろう。繊維関連の利益の落ち込みをカバーする意味でも、新製品アルコックスは必然と生まれたヒット商品であった。そこで、ここを商機とみた会長は英断を下した。アルコックスの製造工場を建てる設備投資を決めたんだ。

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しかし、戦争の被害がなかった京都のこの地に、新工場を建設する土地が空いているわけもなく、その時に目を付けたのが三重県津市の海岸沿いに造成中の工業団地だった。当時会社を掌握していた会長の英断と、津市長の熱い思いもあって、京都からは程遠い三重県の中勢地区にアルコックスの生産拠点を構えたんだ。

最近開通した「新名神高速道路の計画」を察知していたんだね、さすが会長だ。それができるまでの津工場は、とても便利な位置にある生産拠点とは言えなかった。

以前工場見学に訪れたことがあるが、三重県人の端くれである山じいにしても、訪れるのに相当不便な場所であった。近年この土地に5階建て相当の近代的な工場ビルを建てたそうだ。力入れてるよねー!! 再訪せねば。

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技術研究部門を取り仕切る名工大OB 橋本さん

そんな明成化学工業は、営業、生産現場、研究開発を含めて、200名強程度の会社である。しかしながら、なんとその2割が研究開発に携わっている。そして研究部署のトップが、我が山下研のOBである橋本執行役員である。

彼とは何度も家に泊りがけで呑みに行くほどの間柄。彼は山じいの配下にいたのではなく、前述のうちのボス、N教授が指導する学生であった。が、彼の嫁も山下研OGで、彼女は直接山じいが可愛がっていたんだよね。我が山下研は何とも研究室内婚が多いことで有名である。みんな仲が良いのだよ。

彼は学生のころからとても頭が切れる、そして人を使うのがとてつもなく上手い!! それが山じいの抱いていた印象だ。

彼は明成化学工業に入社後、一貫して繊維加工助剤系の明成化学工業の主力製品の開発に携わっており、最近若干40歳を超えたところで若くして役員に取り立てられ、明成化学工業の研究を統括する執行役員として、皆が集う総合研究棟2階の研究室でにらみを利かしているということなんだ。

橋本執行役員はこれまでの明成化学工業のヒット製品の生産・改良を指揮するだけでなく、次世代の機能性薬剤の開発に、後ほど紹介する大阪府大のドクター修了者と一緒になって力を入れている。

こんな規模感の会社だからこそ、各人が中心となって、新しいテーマの開発を主導できるんだな。誰かこの都の地で、橋本執行役員と共に、新しい機能性薬剤開発をやってみようという強者はいないか!? 名乗り出よ、いくらでも紹介してやるぜ!!

そしてもう一つこの橋本執行役員の特徴は、とても人たらしなのである。芯がとてもしっかりしていて、どちらかというと強情な方なんだけど、人前での対応がとても柔和なんだな。だから彼から頼まれると、イヤと言いづらい。そして頭が切れるので、人への説明がとても上手なんだ。

そこで山じいは、人事の東出さんやうんちゃんと相談して、この橋本執行役員を中心としたリクルーター組織を結成したんだ。これまでのように大学毎にOBが個々に出向いて説明をしてくるという、旧態然としたリクルーター活動を止め、橋本執行役員と前述のドクター修了者などのリクルーター軍団を主要大学に送り込むスタイルを採ることにしたんだ。

2021採用用に、山じいが明成化学工業でリクルーター養成講座まで開いたんだぜ。その効果はしっかりと出ており、この春初めて山下研以外の名工大生が入社することも決まっているんだ。

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優秀な学生が集まる明成化学工業

そんな採用活動の工夫で入社してきた若手社員を紹介する前に、この会社のターゲット層(つまり、どういう大学から入社させているか?)を紹介する。山じいがこれまで「おもろい企業探索ツアー」で紹介してきた会社群は、大体ここと同じ規模の200名前後の正社員を有するメーカーがほとんどだ。

たとえ1000名規模感の中堅企業でも、採用ターゲット大学は、ほぼほぼ中部地区の私学工学部が中心で、その中に東海三県にある国立大学工学部出身が散見される程度であった。この東海地区では大体そんなところである。

だがしかし、明成化学工業はこの規模感の会社ながら、名工大、福井大、岡山大、京都工繊大、大阪府大を中心に、九州大学神戸大学などと、相当な上位校出身者が目白押しなのである。これは凄いことだと思う。さすがに若干大学の偏りはあるが、名工大生と言えども侮ってはいけない人気企業なのである。

これまで名工大からの入社がうちの研究室ばかりであったことは、N教授や山じいとの関係性によるもので、そのような特定の教授との関係性による採用が他の国公立大学でも成立していた。

しかし、これからはそういう特殊で属人的な関係性に頼るのではなく、もっとフラットに全国の国公立大学からの採用を狙おうとしているのだ。

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博士後期課程修了 化学大好き岡村さん

さてそれでは、そろそろ元気な明成化学工業の新人君たちを紹介していこう。

まず最初に登場してもらうのは、先般より何度も出てきた大阪府大出身の元気印、Mr.ドクターこと、岡村君だ。彼は大学時代色素系の研究室で、博士後期課程まで、なんと6年間も研究をこなし、その後、この明成化学工業に入社した。彼の所属研究室は前述のうちのボス、N教授の元いた研究室で、当然ながらこの会社とは縁の深い大学研究室出身だったのだ。

岡村君は長い間研究に没頭してきた。なにせ6年の間に論文を8報も出しているのだ(通常なら、2〜3報が普通だ)。だから、山じいは邪推していた。就活する暇がなく、気がついたら就活の時期が過ぎていて、あえなく関係の深いこの会社に来たんじゃないかと……。

だから、失礼は承知の上でダイレクトに聞いちゃった。「研究し過ぎて、就活する時間がなかったのか?!」って。これは岡村君だけでなく、明成化学工業さんにも失礼だよな。反省!!! ところが彼曰く「いやいやいや、先生、ちゃいますよ! 確かに死に物狂いで研究して論文書きましたけど、就活もキチンと押さえてましたよ。逆に、就活をスムーズに進められたから、安心して研究に打ち込めたんです」だってさ。なんと、できる答えが返ってきたじゃないですか。

彼はもちろんケミストリー大好き人間で、研究開発のやれる会社、そう、直接フラスコが振れる会社を探したんだって。でも、大きな組織の中で研究に携わると、自分の色や力を出せないと判断したそうだよ。

そこでかねてからOBがたくさん就職しているこの中堅ケミストリー企業、明成化学工業に照準を合わせたんだって。山じいが訴えているように、この会社の開発が大学研究室のような雰囲気の中で自由に進めることができることを、OBたちから聞いていたんだね。だから就職は端からココって決めてたんだって。それで就活に余計な時間を取られることなく、思う存分好きな研究に打ち込めたんだね。いやぁーやるわいな、岡村!!!

今じゃ前述の橋本執行役員のお膝元で、ガシガシ研究ができているそうで、周りの人からだけでなく、貴志(きし)社長からも注目されている年季の入った新人なんだよ。山じいもこの間、リクルーター研修会の打ち上げで岡村君と一緒に呑んで、その人柄に惚れてしまって、岡村君を明成化学工業のリクルーター組織の頭に据えるようにと、東出さんにも進言したところなんだ。 

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森林科学がきっかけで京都へ移住した田中さん

次に紹介するのは、京都府立大学 生命環境学部 森林科学科卒という、異色の経歴を持つリケジョ、田中さんだ。彼女は何と名古屋出身。わざわざ森林の研究がやりたいと、京都府大を選び、将来も森林に携わっていこうという強い意志を持って、この都の地に出てきたんだって。

でも、なんと彼女、大学で研究をしている最中に、極度のヒノキアレルギーであることが判明。大きく人生の舵を切らなくてはならなくなったんだ。それでも、森林の研究はやりたかった。でも、残念ながら京都府大の就活支援はあまり活発でなく、情報企業の斡旋を受けて、明成化学工業を知ったんだって。

入社前に会社見学に来た時に、「この会社は働きやすそう」という印象を受けたそうだ。入社後も印象とのギャップはないそうだよ。

現在は大学で学んでいた森林科学とそう遠くはないセルロース関連のテーマを中心に研究に取り組んでいる。

今現在、明成化学工業の開発には3名の女子しかいないのだが、新しくなった寮での生活には満足していて、都での研究生活を満喫できているそうだ。名工大の研究好き女子よ!! 古の都にて、フラスコ振らないかい?? ピカピカの寮が待ってるよ。

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快適な研究環境を求めて九州からやってきた手嶋さん

そして3人目だ。大分生まれで、AKBのさしこと同中だったという九州男児、九大理学部化学科出身の手嶋君だ。普通、九大生は九州の雄として九州内に残ることが多いのだが……彼は違った。

新生活で、新しい空気を吸いたかったらしく、九州を出たかったんだって。理学部出身の彼なので、研究にしか興味がなく、就活は出遅れ組だったのかなと思ったりもしたけど、でも彼も違ったんだな。きちんとM1の夏からインターンシップもこなし、着々と就活は進めていたそうだ。

しかしながら、製薬を中心に進めていたので、就活はあまり上手くいっていなかったらしい。また、九大といえども、工学部でなく理学部では、就活支援も弱く、彼も情報企業のエージェント機能を使って、ここに決めたそうだ。

明成化学工業、エージェントにえらい評価されているな!! 手嶋君も、就活中に何も製薬ばかりが研究できるところじゃないと見切ったらしく、エージェントへの要望は「研究ができて人の環境が良いところ」だったそうだ。

手嶋君はインターン先の会社に会社見学にも行ったらしいんだけど、社内の雰囲気がどうも気に入らなかったそう。でもこの明成化学工業は違ったんだって。山じいお薦めの総合研究棟2階のあの研究室の雰囲気を見て、感じて、即決したそうだ。そういう会社なんだよ、この明成化学工業は。

この3人はわざわざ国公立出身者を並べたわけではなく、この会社の研究開発に携わっているメンバーは多くがこういう大学出身者で成り立っており、それも「行くとこないからここに来ましたー!!」ではなく、自らここを選んで来ているんだよ。この会社の研究開発の雰囲気が彼らを吸い寄せているんだな。ぜひ名工大生の研究好きも、まずは一度総合研究棟2階を見に来てほしい。絶対惚れるから!!

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3代目貴志社長の思い

さて、最後にこの会社を率いていらっしゃる若社長、貴志さんの想いをお聞かせいただいた。若社長は、スポーツマンであるお父様とは違い、いかにも京都のボンなんだよな。明成化学工業に入る前にも、大手商社で修行を積み、この都に凱旋されたんだ。

バリバリの体育会系の会長とはまた随分違った空気をまとわれている社長で、趣味は写真撮影で、なんと自費出版で写真集まで出しており、新作が出るといつも見せて頂いている。会長が絶対に行かない祇園や東山では、京都の一見さんお断りのお店の常連さんでもいらっしゃる貴志社長。そんな都人な若社長に連れられて、山じいもうんちゃんと3人でいろんなお店に行かせてもらったが、呑みながらお仕事の話をすることはあまりなかった。そこで改めて、仕事の話もお聞きしたのさ!!

「社長、これからの明成化学工業をどうやって引っ張っていこうとされているんですか?」っとね。そしたら、珍しく、きりっとした顔つきで、「先生、そりゃやっぱり『アルコックス』ですよ、でもそれだけでは尻すぼみだ、もう一本柱を立てますよ!」とお返しいただいた。

そう当然ながら、主力製品であるアルコックスを押し上げていくこと、まずはここに尽きるのだが、当然たくさん製品を作れば単価も下がり、利益率も落ちてくる。そうなってくると次の事業投資が難しくなる。

だから、まずはこのアルコックスの新たな機能化、そして活用方法の模索を中心とした研究を進めていく。さらに第2の柱となる製品の開発など、橋本執行役員の話されていた開発の中期目標を経営サイドからも強く後押ししていくんだ、とおっしゃっていた。

そして、これはいつも社員さんに話されていることらしいが、明成化学工業は世の中に必要とされる製品を作っていかねばならない。そのためにも、ここで働く人間は、世の中に必要とされる人間になっていってほしい。そういう気概を持って勤めてほしい、と語られていた。

名工大生諸君、そんな戦略を橋本執行役員の配下、岡村君たちと一緒に、思う存分形にしてみないかい? とてもやりがいのある仕事だと思うよ。少しでも興味が湧いたらすぐに山じいに申し出てほしい。いつでも総合研究棟2階の研究室見学をさせてもらえるからさ。自分の力で研究開発して、世の中に必要とされるものを作りたい人、この指とまれ!!

文 山じい
編集・撮影 つかっちゃん

 

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明成化学工業株式会社

1940年創業、京都市右京区に本社を構える化学薬品メーカー。繊維関連の化学品製造から事業を開始し、今では多岐にわたる分野でのオリジナル製品を展開している。「お客様の製品の品質をあげること、生活を豊かにすること」を目指して開発・製造・アフターフォローに力を入れている。少人数精鋭の開発現場は裁量が大きく、アットホームな雰囲気。

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