山じい完全ウォッチング

名工大生の就活に必要な情報を発信中。名古屋工業大学キャリアサポートオフィス長 山下教授に完全密着。Presented by welcomes inc

元請けだから使い手目線のモノづくりができる|おもろい企業 中設エンジ(前編)

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おもろい企業探索ツアー第16回は、『中設エンジ株式会社』。
このシリーズは名古屋工業大学に縁のある企業を訪問して、社長や役員、名工大卒業生に話を聞き、山じいの視点からその魅力に迫るという企画です。では前編をどうぞ。(過去の特集一覧はこちら

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中設エンジの本社はルーセントタワー37階! 素晴らしい眺望の会議室でお話を伺いました。

おもろい企業を発掘するのがこの連載の使命

さて、今回伺ったのは、名古屋ルーセントタワー37階に本社を構えている、「中設エンジ」だ!! 聞いたことない会社だよね!! 山じいも昨年の秋まで全く知らなかった会社だ…って、おもろい企業探索ツアーのお決まりのフレーズになってきちゃったね、これ!! 

「もっと大きな有名企業を紹介してよ!」っとか、「もっとB to C企業のこと聞きたいわ!」って意見もあると思うけど、そーんな会社は君たち自分で知らべなされ!! いくらでも情報あるじゃろうが! 君らが知らない(いや、山じいも知らない)ニッチなんだけど、面白い、そんな尖った会社を発掘するのが、この連載の使命なのじゃ!

中設エンジと出会った「理系の学生の採り方セミナー」とは

中設エンジ、この会社も相当オモロイで。楽しみに読み進めてほしい。まず、山じいはこんな会社をどこで見つけてくるのか? そう、そこんところ大事である。昨年秋、名古屋市商工会議所主催の「理系の学生の採り方セミナー」で講演をした時に、初めて名刺交換をしたのよ。人事の本多さんと杉浦さんとちょこっとお話しただけで、ピピッと来たんだ。 この会社、施工管理会社の割には(?!)オモロイやんって。

名古屋市商工会議所」って言われても、イメージできんかな? 前回、東海光学を紹介したときに、岡崎商工会議所のことは紹介したよね。あのときに、商工会議所という組織、使命、活動について少し説明したけど、名古屋市商工会議所も、活動内容は同じ。地域の中堅・中小企業の支援、育成を主目的にしている組織なんだな。 

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採用担当の本多さん(左)と杉浦さん(右)

名刺交換会で直感した「この会社はオモロイ!」

「理系の学生の採り方セミナー」に参加されていたのは、ほとんどが名工大とは縁の薄い中小企業さん。そんな会社さんが30社近く、名工大生狙いとはいわないまでも、理系学生を採用するためのノウハウを学びに来られているのである。

講演会だけでも大変なのに、その後に開催される名刺交換会では参加企業約30社の採用担当者と3分以内でご挨拶…つまり1時間半も、これまで知らなかった会社さんと名工大生の採用についてお話していかなければならない。山じいとしては脳みそが沸騰するような荒行だったんだけど、その中でピピッと来たのがこの中設エンジだったのだ。あ、ここまでで、まだ中設エンジが何の会社なのか、触れてなかったね。 

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人事部 採用管理課 課長 金岩さんから詳しくお話を伺いました

中設エンジは食品工場に特化した施工会社

中設エンジは、1968年に東海地区のインフラの雄「名古屋鉄道」と大手総合商社の「伊藤忠商事」の合弁会社として誕生。設立当初は名鉄バスターミナルの内装施工を担う会社で、「中央設備エンジニアリング」という社名だったそうだ。資本金2億円、従業員数249名。規模的には中堅と中小の間くらいの会社かな。残念ながら、名工大OBは在籍していない。

山じいが前述の名刺交換会の荒行の中で中設エンジにピピっと来たポイントは、この会社が「食品工場を専門に設計施工している会社」だっていうことだ。

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「食品特化」は二次請けから元請けになるための戦略

山じいは毎年12月25日、つまりはクリスマスの日に「食品業界研究会」を開いている。イブに彼女、彼氏と温かな時間を過ごせなかった、かわいそうな君たちを元気づけるために、食品業界の皆さんがケーキやお菓子など、自社の食品を持ち寄って集まってくださる企画、それが食品業界研究会なんだ。過去にこのイベントで心を癒された学生も多いのではないかな。

施工管理の会社というと、君らはあまり惹かれんかもしれんが、あの食品業界研究会の盛り上がりようから察するに、「食品工場」に特化している施工管理会社なら、興味を示す学生も多いのではないだろうか? そう閃いた山じいは、名刺交換会のその場で人事の本多さんと杉浦さんに今年度の食品業界研究会への参加を提案し、このブログのことも紹介したんだ。

中設エンジは、元々室内設備の施工をメイン業務としていたんだけど、20年ほど前に有名食品メーカーから中途入社した社員の影響もあって、食品工場に特化するようになっていったそうだ。その頃から、施工という二次請け(サブコン)的な立ち位置を徐々に脱し、食品工場建設の設計・施工・設備をまとめて取り仕切る「元請け」の立ち位置へとシフトすることに成功した。

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建設業界の絶対的ヒエラルキーとは

建築や土木のみんなはよく知っていると思うけど、ビルや公共施設などの巨大な建造物は「スーパーゼネコン」が国や県や民間の施主からの要求を聞き取り、構想を立ち上げ、全体構造を設計している。そして、サブコンにそれぞれのパーツを任せ、そのサブコンが自社の得意なパーツ設計を行い、さらにその配下の協力企業さんたちに実際の組み立てを任せる構図になっているんだ。大手メーカーのサプライチェーンに似ているよね。

サブコンは、元請け(スーパーゼネコン)から下りてきた構想を実際の形にするために設計し、作業工程を考え、三次請け、四次請けの協力企業さんに現場実務を依頼するわけだ。だから、サブコンには必ず「施工管理」という、協力会社のニッカポッカのおじさんたちの取りまとめ業務が出てくるんだ。ま、もっと言うと、そこがメイン業務になる。 

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中設エンジが手掛けた食品工場の外観例(写真は㈱浜乙女さま)

HACCPを味方に

以前紹介した「山田商会」も、東邦ガスの配管業務のサブコンをしていることは説明した。だから、サブコンの施工管理については君たちもイメージできているんじゃないかと思う。だけど一般的にいうと、請け仕事は分が悪い上に、どうしても現場のおじちゃんの取りまとめ業務という部分が引っ掛かって、就活生に人気がないんだよな。でも逆に「そこが面白い」という人間好きな奴もいるんだけどね。

中設エンジは、創業当初は純粋なサブコンだったけれど、いやこれだけじゃ儲からないし、第一面白みに欠ける。だから「仕事を施主から直接受けられる会社になろう」と動き始めたんだな。

だけど、建築業界全般では中設エンジには荷が重すぎるんだよな。とてもポッと出の中堅企業では太刀打ちができない。だからこその「食品工場専門」なんだよ。ニッチなターゲットだから大手の参入が少ないってのもあるんだけど、さらには「HACCP(ハサップ)」という、食品業界特有の面倒な衛生管理制度があって、入り込むのにはリスクが大きいから大手企業が敬遠してたんだな。でも中設エンジは元々、鯉の甘露煮工場の建設やホテルを複数手掛けていたので、食堂などの施工にも明るく、食品工場の設計・施工業界に入って行けたんだって。

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伝言ゲームの途中でオーダーが変質するリスク

「食品工場というニッチな領域で、設計、施工、さらには設備導入まで、ユーザーの想いをワンストップで受け止め表現する、ユーザーズ・エンジニアリング企業」、これが中設エンジのキャッチコピーだ。う〜ん、この意味を、一体どれだけの名工大生が理解できるんやろうか???

建築業界には、元請け(ゼネコン)→ 二次請け(サブコン) → 三次請け → 四次請け といったヒエラルキー構造があることは説明した。しかし、「施主さんの想い」を現場の隅々まで下ろしていくには、このヒエラルキー構造は厄介なんだなあ…。普通施主さんは、元請けゼネコンの設計者と打ち合わせをする中で、「こんな工場を作ってほしい」という想いを伝える。でも、現場で実際に建物や設備を作っているのは二次請け、三次請けの協力企業のおじちゃんたちだ。

例えば、ある設備を入れるにしても、その電源の位置一つで、機械の使い勝手が違ってくる。つまり、【生産したい製品】があって→【作る工程】→【作る設備・機械】→【その配置と作業員の動線】→【工場のレイアウト】となるわけだ。それぞれのフェーズを違う会社が受け持つと、建設途中の工場を見た施主さんが「あれ? あそこは〇〇してって伝えてたはずだよね」なんて言い出すことが多々ある。施主さんの想いが現場の人たちにうまく伝わっていないと、建設途中で急に変更が生じ、現場作業は困難極まるわけだ。

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中設エンジなら必ず施主の思いを形にできる

そんな施主さんの想いを、設計・施工まとめてワンストップで引き受けることができれば、とてもスピーディーに、そしてスマートに、施主さんの想いを細やかに叶える建設ができることは想像に難くないだろう。だけどまあ、普通のゼネコンにはそんな自在性はないのだ。だからこそ、中設エンジは「食品工場建設」の特殊分野を狙って、特異性を出すことができたのである。

さらには、その中に入れる設備の選定までも差配できることによって、工場内での人と物の動線まで考えた工場設計を取り仕切ることができる。つまり、中設エンジに頼めば、使いやすい工場を建設してくれるんだ。こんな施工会社は世の中に中設エンジを除いて見当たらないんだって! これは面白い特長ではないかい?

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松本社長にじっくりお話を伺った

そうこう、人事の金岩さんから中設エンジのおもろいところをレクチャーしてもらってから、いよいよこの会社を引っ張っている松本社長との面談となった。

もう情報はいっぱい頂いたし、社長とのお話は小一時間もあれば十分と思っていたんだけど、なぜか、本多さんが立ててくれたスケジュールでは、二時間とたっぷり取ってあった。どのようにして話を延ばそうかと思案していたんだけど、その心配は杞憂に終わったわ。出てこられたダンディーな松本社長は、よー喋ること、喋ること!! 毎度インタビューと言いつつ、いつも山じいの独断場になることが多いのだが、こちらが口を挟む余裕もないほどたくさんお話いただいた。なんと松本社長は以前、伊藤忠商事の広報部長だったとかで、そりゃ喋りますわ。人事の金岩さんも広報を担っているだけあって多弁な方だったが、その彼をして「うちの社長は話し出したら止まらない!!」と言わしめるだけあって、まさにその通り。ここで伺った、松本社長の力説ポイントをまとめてみた。

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親会社が伊藤忠商事名鉄であることも信頼の一助に

中設エンジの売りは、「施主さんの想いをワンストップ(一箇所)で受け取り、設計・施工・生産設備までを一元的に取り仕切ることのできる『ユーザーズ・エンジニアリング』」で、世の中広しと言えども、中設エンジだけの強みなんだそうだ。これは建設業界において、どうやら本当に凄いことらしいんだ。

さらに、一口に食品工場と言ってもその設計内容は実に多様で、パン工場と惣菜工場では全く異なる。それに加えて、安全な食品提供の管理手法である国際基準の「HACCP」を熟知して、クリアできる工場を設計をしないといけないんだ。口に入るもの作る工場だから、その辺りの衛生管理が厳しいのは素人にも分かるよね。食品工場をつくるのって、相当シビアなんだよ。だからこそのニッチさで、他社や大手の参入を許さないんだ。

そうしてもう一つ、なんてったって、親会社が東海地区のインフラの雄「名鉄」と大手総合商社「伊藤忠商事」であること。こういったことは、お客さんの信用を得るためにとても大事なことで、経営基盤の視点から見ても有利なことだそうだ。

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モノづくりへのディープな理解から工場作りは始まる

最後に、松本社長の面白かった話をもう1つ紹介しておこう。

中設エンジが、例えば「パン工場」を作ることになったと仮定しよう。このとき、中設エンジの技術者は、初めに「自分でパンを作ってみる」そうだ。工場ではないにしろ、パンを作る工程を自分でやってみて、初めてパン工場に必要な「機械」「空間」「時間」が見えてくるんだって。どんな原料を、どんな機械で、混ぜて、こねて、寝かせて、焼けば、美味しいパンが出来上がるのか…それらが分からずして、パン工場の設計・施工はできないんだって。

製品 → 工程→ 人物の動線 → 設備の配置 → 工場の設計 ……前述したこの流れを一貫して請け負うことで、美味しいパンを効率よく作れる工場が完成する。そういったことを元請けでできる会社、それが中設エンジなんだ。

さて、中設エンジ・前編はいかがだったかな? 後編では、関東で有名なラーメンチェーン店「AFURI」のセントラルキッチンや、大手総菜メーカーのパッキング工場を、実際に設計・施工した技術者の皆さんのインタビューから、中設エンジマンの苦労・工夫・やりがいについて書こうと思います。お楽しみに〜!!

後編につづく

文 山じい
編集・写真 つかっちゃん

後編はこちら

blog.nityamakei.com

 

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中設エンジ株式会社

1968年名古屋鉄道グループと伊藤忠商事の折半出資で設立された、食品工場の生産設備に強みを持つ建設会社。設立当初は一般設備関係の設計・施工を行うサブコンだったが、下請けからの脱却を実現するためにゼネコンとして食品工場の設計施工に特化。今では、建築・設備・エンジニアリングの3つの顔を持ち、お客さんの要望を実現できる体制を強みに事業を拡大している。

 

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