『おもろい企業探索ツアー』第8回は東和耐火工業株式会社。
このシリーズは名古屋工業大学に縁のある企業を訪問して社長や役員、名工大卒業生に話を聞き、山じいの視点からその魅力に迫るという企画です。では後編をどうぞ。(前編はこちら)
OBの姿を通して東和耐火工業をもっと深掘りしていこう
東和耐火工業の技術職は第一事業部または第二事業部に配属される。
公共施設の焼却炉や石油の精製プラントを対象とする第一事業部と、大手製鉄所の溶鉱炉を対象とする第二事業部では、売り上げこそ5:5だが事業内容は大きく異なり、第一事業部は東京を拠点に炉の設計から施工までに直接携わる一方、第二事業部は可児の工場で耐火素材の分析・配合調整を主な業務とする。
前編でも紹介した通り、東和耐火工業には名工大OBが14名も在職しているが、彼らはどんなことをしているのだろう。
東京に拠点はあるけれど、仕事エリアは全国各地
まずは第一事業部で働く高木さん(H7年卒)と児島さん(H8年卒)に会うために東京の本社へ伺ってきた。
第一事業部は各施工現場での調整能力やコミュニケーション力が必要とされる部門である。
さすがに顧客との信頼関係が大切な第一事業部で働く二人だけあって、どちらも弁舌爽やかでスムーズにインタビューは進んだ。
二人ともN先生の紹介で東和耐火工業に入ったそうで、可児市出身の高木さんの場合、文句無しでN先生の鶴の一声、
N先生「高木、お前に可児の会社紹介したるわ!」であっさり決まったらしい。
高木さん「でも入社早々第一事業部に配属されて、もう可児より東京での生活の方が長いんです…。」と苦笑い。
さて、高木さんの一年後輩の児島さんも同じくN先生に背中を押されてこの会社を選んだひとり。
関東出身の児島さんにとって第一事業部は希望通りの配属だったらしいが、第一事業部の取引先は全国津々浦々にあるので各社の施工現場へ出掛けるという業務上、数週間から一か月ぐらいのスパンで国内各所を転々と回るのは想定外だったようだ。
お邪魔した日も第一事業部のメンバーはほとんど外出中で、閑散としたオフィスであった。
第一事業部の使命はモノづくりを通した信頼関係づくり
入社以来、高木さんはクリーンセンターのごみ焼却炉一筋、児島さんは石油プラント一筋だそうで、特に希望を出さない限り、この会社は同じ業務を長く任せてくれる。
だからこそ顧客との厚い信頼関係の下、一つの炉を通して取引を継続できる東和耐火工業ならではのスタイルが完成するのだ。
耐火材は使われる環境によって劣化の進行具合が千差万別で「あのお客様の炉は、そろそろあの辺りに痛みが出てくるころじゃないだろうか」と思いやり、声を掛け補修に入ったり建て替えを提案したりするとのこと。
二人ともこの仕事に本当にやり甲斐を感じていて、東京を基点に全国の取引先と関係を保ちながら、色々な場所で仕事ができることが楽しいそうだ。
第一事業部は炉の設計が3割で、後の7割はそれを各地の現場で施工することと、何より施工を通して信頼関係を構築していくことがメインになるので、「モノづくりがしたい」「人と関わるのが好き」という人に入社してほしいというのがOB二人の声であった。
施工現場を訪ねて 軽井沢の隣・長野県佐久市まで
第一事業部の社員が実際に働いている様子を見るために、秋空が綺麗な9月中旬、長野県佐久市に建設中のごみ焼却炉建設現場に潜入してきた。
東和耐火工業の本社を見学して、この会社のおもろさは施工現場にあるんじゃないかと思い、急遽取材の手配をしていただいた。
2時間の視察のためにわざわざ東海道新幹線と北陸新幹線を乗り継ぎ、なんと往復8時間の行程であった。
ごみ焼却炉の事業主体である佐久市・北佐久郡環境施設組合さんと施工主体である荏原環境プラントさんの特別な許可を頂き、建設中のクリーンセンターの焼却炉の中に潜入してきた。
このクリーンセンターは佐久市を中心とした軽井沢近辺の10市町村のためのゴミ処理場で、その規模感たるや凄い!!
5階建てで焼却炉が2基入り、年間3万トンものゴミを燃やし発電も行う。
現場はやはりカッコイイ!誇りを持って働く大人達
その大きな建設中の建屋に上下作業着+安全靴+ヘルメット+安全帯、さらには防じんマスクまで装着した完全装備で、荏原環境プラントの現場所長 大石さんと、東和耐火工業 第一事業部 副事業部長の佐藤さんに案内していただいた。
まずの第一印象は、でかい!!の一言。
きっとビルやダムの工事現場にもこういう印象を持つんだろうけど、なんだかとっても気持ち良いんだよね!!
さらに地域のクリーンセンターを作っているということで、地域の皆さんのお役に立っているって誇らしい感覚も芽生える。
土木や建築の人はこういった施工現場での喜びを感じることができるんだけど、東和耐火で働いている人たちは化学や材料の卒業生で、本来こういう現場には無縁なはずの学科である。こりゃ一やり甲斐があるね。
大きなプロジェクトに複数携われる楽しさ
それから現場で強く感じたのが職場の雰囲気の良さだ。
特に現場所長の大石さんと、佐藤さんは大変仲が良かった。
お邪魔した直後、大石さんは随分緊張されていたようだが、佐藤さんも交えて会話するうちにどんどん山じいにも打ち解けて、お暇する頃には「荏原環境プラントの採用もお願いします。」的な話をするまでになった。
単なる仕事上の関係でなく、一緒に大きなプロジェクトを成功させるぞ、という信頼感を共有しているんだろうね。
東京で会ったOB二人が話していた「楽しい仕事」というのがリアルに感じられる施工現場の取材でした。行って良かった。
そしてもう一つ良いと思ったのが、施工期間の短さ。
土木や建築の就活生が施工管理という職種の選択を躊躇う理由の一つに「やり甲斐のある大きな仕事ほど山深い所や海辺の僻地で、年単位になる工期を全うしなくてはならず、文化生活からかけ離れた生活を送らねばならない」ということ。
東和耐火工業の仕事は炉の耐火物施工だけなので、長くても月単位、普通は数週間で施工が完了する。
なんだか全国の現場を長期滞在型の旅行気分で回れるじゃないかなって、旅好きの山じいにとっては羨ましい職場環境だわ。
第一事業部にいる名工大OB達が活き活きと仕事しているのは、おそらくこの環境の所為でもあるんじゃないかな。
第二事業部ではたらくOBも何だか楽しそうだ
次は第二事業部のOBの話を聞いてみよう。
可児市にある第二事業部の取引先は概ね決まっていて、大きい所では製鉄大手のJFE。
JFEの溶鉱炉の施工はJFEエンジニアリングが請け負うので、東和耐火工業が施工することはない。 鋳鉄溶鉱炉用の不定形耐火物の素材配合調整がメインの仕事になるので第二事業部には化学・材料系出身の方が多いようだ。
今回は、人より長い間大学に通っていた森口さん(H16年度卒、環境材料山口研(現 橋本研)卒)と、なんと名工大から東大の大学院へ進学したが出身地の岐阜へ舞い戻ってきた錦見さん(H27年度卒、生命応用化学科生物生命プログラム(伊藤研)卒)の少し変わった二人の話を聞いた。
森口さんの大学時代の研究内容はモロ耐火物化学で、ぴったりのおしごとを所属研究室のボスから紹介されたようだ。
長い大学経験を存分に活かし、開発部門を経て今は第二事業部全体を見渡す品質管理部の課長さんとして頑張っている。
第二事業部は素材の配合調整だけの部門のように聞こえるが、実はとても奥が深い仕事で現在は「混ぜること」に心血を注いでいるとのこと。
森口さんは「やりたいことをやらせてもらえる今の仕事に十分に満足している」そうだ。
名工大から東大院へ進学した錦見くんの判断軸
錦見さんの東大での研究内容は発生生物学なので、こちらは全く関係ない。
東京の大学では学内で東海地区の就職先企業を見つけるのは難しい。
彼は学生個人へ近づいて就活を支援するエージェント(その学生が就職したら、企業からエージェントへお金払う仕組み。中には学生本人からお金を回収する悪いエージェントもあるので気を付けようね。)経由で東和耐火工業を紹介されたそうだ。
「大手に行くとずっと研究ができない可能性がある」「最初から生産技術畑ということもありうる」ことを察知し「地元で研究がやりたい」とちゃんとそこまで考えた上で東和耐火工業を選んだしっかり者だよ。
ちなみに名工大ではできるだけエージェントを排除しています。
君たちの就職が売り買いされているのはあまり見ていて気持ちのいいものじゃないからね。(個人的に活用するのは止めようがないけどね)
最後に社長の想いを記しますが、何よりも「社員のための会社でありたい」ということで、この10年間新卒で入社した総合職約30名のうち、離職はたった1名なんだそうだよ。
ほぉー・・・凄いな。
小島社長のビジョン 2代目の重責
小島社長は創業者でもある現会長の息子さんであり、東和耐火工業の実質の2代目である。
父親が設立以来50年ここまで大きくしてきた会社を守っていかなければいけないという宿命を背負っている。
彼の一挙手一投足がこの会社のこれからを、そして一緒に働いている160名の従業員、およびその家族の生活を左右するのだからその想いは特別だと思う。
上手くいって当たり前、凹ませたら凡庸な2代目と笑われる。大変な立場だよね。
小島社長の想いは次の3つである。
- 雇用を守ること
- 事業を展開すること
- 従業員が幸せに働けること
っと、まあ普通と言えば普通なんだけど、社長にはそれなりの成算がある。
どれも結局は同じ所に帰結するのだけど、それぞれの作戦は次のようだ。
1. 雇用を守ること=仕事を作り続けることなんだけど、ここが耐火物の特殊性だ。
耐火物は厳しい環境下で使用されるがために、頻度の高いメンテナンスが必要不可欠で、作っておしまい!というわけにはいかない。
だから顧客のニーズを先回りしてサービスを提供し続ける事ができれば、必ずメンテを任せてもらえて、リピーターになってもらえるんだ。
前述した第一事業部の本学OB諸氏の話からもこのことは納得できるよね。
耐火炉がある限り、そしてお客の心を掴んでいる限り東和耐火工業の仕事は無くならないんだ。
2. 事業展開 ここでも社長は先々まで考えている。
不定形耐火物には施工が不可欠。
もちろん東和耐火工業にも施工をメインとする第一事業部があるけど、施工を外注することもある。
それら付き合いのある施工業者を子会社化したり買収したりせず、経営支援という形で傘下に入れることにより共に事業の安定化に貢献している。
また日本の様に産業が成熟している国では、新しい耐火材を使用する炉の建設需要は少ないけれど、発展途上国では供給不足の必須アイテムなので、これからどんどん海外進出をしようと考えているそうだ。
まだまだ伸びまっせーこの会社は!!
3. 社員が幸せに働けること
これはねぇ、他の会社でもよく聞く言葉だけどなかなかトップと社員の感じていることは合致しないものだ。
元リクルートの転職のプロが選んだ東和耐火工業の強み
そこで実際の東和耐火工業の福利厚生の具合を人事の中川さんに聞いてみた。
まずもってこの中川さん、まだお若いんだけど、前職はかのリクルートキャリアで、一番儲け頭の中途採用のアシストをされていたそうだ。
大手企業の人材開発・斡旋やリストラはたまたヘッドハンティングの支援を商売にしてきた人が、どうしてこの会社に転職をしてきたのか??
しかも彼は兵庫出身で、東京も可児も全く地元ではないんだ。
彼の答えは以下の通り。
1. 企業を見るプロとして景気の波に左右されない、絶対に無くならない業界を探した
2. 中途斡旋のプロとして、この会社の技術力とワークライフバランス・給与などのバランスが非常に良いことを見抜いた
3. 実際の福利厚生や離職率などを見て安心できる会社だと確信した
4. 多くの会社の浮沈を見てきて、大手=安心という構図は信用できないことが分かった
リクルートの中途斡旋のプロが自分の転職先として選んだ会社ということは、これは評価高くねぇーかー??
天下のリクルートから160名の中小メーカーへの転職だよ!?
もちろん福利厚生も良い!太っ腹!
そしてもう一つ、産休育休など女性の働きやすさへの配慮などは当然ながら、この会社の福利厚生の面白いところはJTBの提案するJTBベネフィット制度を導入して旅行と映画にえらく大盤振る舞いしているところだ。
映画は年間10本迄800円で鑑賞出来る。
更に旅行補助は夏のハイシーズンに、一泊6000円/人の補助金が本人だけでなく、親や子供に至るまで、それも回数無制限で享受できるんだって。
これはちょっとやり過ぎと違いますかね??社長!!
そんな大盤振る舞いができるのも、オーナー企業の強みだね。
どう?OBや社長さん、そして元リクの採用担当中川さんの声で東和耐火工業のおもろさが伝わっただろうか?
中川さんとは今後、名工大生のために秋冬インターンシップをプログラムするつもりだ。
受けてみようかなっという気になったなら、まずは下記から連絡を入れてみてくれ。
山じい
東和耐火工業株式会社
1967年創業、生産拠点を岐阜県可児市に置く不定形耐火物メーカー。耐火物の設置や保守に携わる第一事業部と、製品の性能追求と製造を担う第二事業部からなり、名古屋工業大学のOBが14名も在籍する(2019.9現在)稀有な中小企業。製品の特性上新規参入は難しく業績は非常に安定しているが、市場開拓のために海外進出も推し進めている。